キンギョハナダイ
紀伊田辺 いつの間にか
私は海を潜っているときに 涙ぐんでいることがある
見上げる水面から 日の光が差し込んでいる光景を目にするとき
イワシの大群が 体をキラキラさせながら 私の横を通り過ぎるとき
海藻の林を縫うように泳ぐ アオサハギを見つけたとき
私は 涙ぐんでしまう
光の届かない深い海で キンギョハナダイのちびちゃんが
じっと こちらを見つめていたときも
海底ー40mに広がる オオカワリギンチャクの丘が
うっすらと見えてきたときも
さらに深く 誰も訪れない静かな砂底に転がる 小さなガラス瓶に
5mmに満たないミジンベニハゼの子が
元気に体をくねらせているのを見つけたときも
私は 涙ぐんでいた
大海原で 何処からともなくやってきたオオイトマキエイが
私と泳ぎっ子してくれたときも
数え切れないグレの群が 静かに泳ぎ去るのを 身じろぎもせず
見つめ続けていたときも
川の流れのように連なって泳ぎついたアジの大群が作る大きな輪の中に野生のアシカが 飛び込んだ瞬間を目にしたときも
私は 涙ぐんでいたと思う
海を潜り始めて いつの間にか
わたしは 泣き虫になっていた